1 術後遠隔期予後
①生理的修復術後

 右室が体心室である生理的修復術後10年生存率は,55~ 85%で,主な死因は,再手術,突然死,右室機能不全,不整脈である.合併心疾患を伴う場合の平均死亡年齢は40歳前後とされる.三尖弁置換術,心外導管兼心室中隔欠損閉鎖術後の心外導管に対する再手術率は高く,10年で約1/3に認める.10~ 20年ごとに導管形成術を行うことが多い.修正大血管転位で,心室中隔欠損兼肺動脈狭窄例は,初回心外導管手術後に,三尖弁閉鎖不全の悪化を認めることが少なくない.また,心外導管狭窄解除術後に,三尖弁閉鎖不全を悪化させることがある.体心室右室機能,三尖弁閉鎖不全が経年的に悪化し,心房粗細動を伴うが,突然死は少ない.副伝導路は右室に認められ,上室頻拍を伴うことがある.自然経過あるいは手術合併症として高度房室ブロックを発生し,ペースメーカを装着することが少なくない.

②ダブルスイッチ術後

 左室が体心室となるダブルスイッチ(DS)術後の体心室左室機能は良好である.術後遠隔期成績の報告は少ないが,術後生存率は,10年で90~ 100%,15年で75~ 80%,遠隔期死亡のリスク因子は三尖弁閉鎖不全の残存とされる.多くはNYHA機能分類I-II で,我が国の報告によると術後10年の再手術回避率は, 動脈スイッチ術後例で 84.4%, 心外導管術後例で,89.6%とされる.
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先天性心疾患術後遠隔期の管理・侵襲的治療に関するガイドライン
(2012年改訂版)

Guidelines for Management and Re-interventional Therapy in Patients with Congenital Heart Disease Long-term after Initial Repair(JCS2012)
【ダイジェスト版】