1 大動脈弁閉鎖不全,大動脈基部拡大
①経過観察と再侵襲的治療の適応

 基本的には臨床症状と心エコー検査で経過観察を行う.軽度の大動脈弁閉鎖不全(AR)で左室拡大がない無症状例は,12か月ごとの定期検査を行う.中等度のARで左室拡大を認める例は,選択的冠動脈造影検査による冠動脈狭窄の有無や6~ 12か月ごとの左室機能評価を検討する.安静時ならびに運動誘発性期外収縮を認める場合は,左室拡大の進行がなければ,中等度の運動までの許可を検討する.ARに伴う狭心痛や呼吸困難などの自覚症状を伴う症例は,手術適応を検討する(クラスIIa,レベルC).

 新大動脈基部拡大は,動脈スイッチ術(ASO)後比較的早期に急速に進行する.大動脈基部拡大が高度な場合(成人例では基部径55mm以上)は手術を検討する(クラスIIa,レベルC).

②術式選択と予後

 ASO後のARに対する再手術としては,通常弁置換術(AVR)が行われる(クラスIIa,レベルC).AVRにおける代用弁としては機械弁と生体弁に大別されるが,現時点においてASO後例は大多数が非高齢者であり,機械弁が選択されることが多い.大動脈基部拡大を伴う中等度以上のARに対してはBentall手術が行われる.ARが軽度以下の大動脈基部高度拡大例(基部径55mm以上)に対しては弁温存基部置換術(David手術)が可能なこともある.ASO後のAVRの遠隔成績は比較的良好である.
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先天性心疾患術後遠隔期の管理・侵襲的治療に関するガイドライン
(2012年改訂版)

Guidelines for Management and Re-interventional Therapy in Patients with Congenital Heart Disease Long-term after Initial Repair(JCS2012)
【ダイジェスト版】