2 再侵襲的治療
 乳幼児期における心外導管を用いた右室流出路再建術は,成長に伴う相対的狭小化と石灰硬化を伴う導管狭窄が生じる.ブタ・ウマ・ウシなどの異種心膜を用いて再建された弁付き導管の10年再手術回避率は60- 70%であり,16mm以下の小口径導管及び低年齢手術後は,石灰硬化を生じ導管狭窄を来たしやすい.これに対し,ePTFEを用いた右室流出路再建例では,硬化を来たすものの5 年再手術回避率は100%である.

 心外導管狭窄が進行した場合,右室後負荷により右室肥大を生じ,右室流出路狭窄が進行する.その結果,重篤な心室不整脈を生じて致命的となる可能性があるため,圧較差が高度の右室流出路狭窄の症例は,再手術またはカテーテル治療が推奨される(クラスⅡ a,レベルB).

 治療の第一選択はバルーン肺動脈形成術であり,効果が無ければステントを使用した拡大術を行うが,全周性の石灰硬化ではカテーテル治療は困難と考えられるため,再手術が推奨される(クラスⅡ a,レベルC).国外においては,心外導管を用いた手術で遠隔期に狭窄が無く閉鎖不全が治療の対象となる場合は,経カテーテル肺動脈弁置換術の適応となることもあるが,その遠隔成績はいまだ不明である.

 再手術では,除去された導管周囲の癒着組織を利用した右室流出路再建,または心外導管置換術を施行する.導管置換術の成功率は高い.しかし異種心膜を用いた再手術の際には,異種心膜が高度に硬化・石灰化していれば胸骨と高度の癒着を来たしていることもあり,剥離の際に容易に破綻し大出血を生ずる危険があるため注意を要する.
次へ
Ⅱ 各論 > 9 心外導管を用いた手術 > 2 再侵襲的治療
 
先天性心疾患術後遠隔期の管理・侵襲的治療に関するガイドライン
(2012年改訂版)

Guidelines for Management and Re-interventional Therapy in Patients with Congenital Heart Disease Long-term after Initial Repair(JCS2012)
【ダイジェスト版】