1 術後の管理
人工弁植込み術後の患者については,機械弁の種類に応じた抗凝固療法の継続と,定時的な心エコーによる弁機能ならびに心機能の評価が必要である.Ross 術後は,ホモグラフトを右室流出路に用いていれば抗凝固療法は不要となるが,右室流出路再建に人工物の心外導管を用いた場合は,ワルファリンによる抗凝固療法の術後一定期間実施を検討するのもよい. ①抗凝固療法 機械弁を用いた大動脈弁置換術後は,通常リスクの患者で機械弁を用いた場合はINR 2.0~ 2.5を目標としてワルファリン投与を行う場合が多い.さらにワルファリンに少量アスピリン(75~ 100mg/day)を追加することもある.ただし,日本人におけるPT(PLE)INRコントロールは,出血性イベントの検討からリスクファクターの無い症例では1.5~ 2.5が望ましいとした報告もある.②機能評価 小児例においては,成長とともに人工弁の相対的狭窄を来たす.また,ワルファリンによる坑凝固療法を行っていても機械弁における血栓塞栓症のリスクは1 ~ 2% /yearとされ,またワルファリンを使用しない生体弁においても血栓塞栓症のリスクは0.7% /yearである.生体弁は石灰硬化や弁破壊などの構造劣化に伴う狭窄病変ならびに逆流性の病変が経年的に進行する. ROSS術後は,移植した自己肺動脈弁機能は良好であるが,時に大動脈弁輪拡張に伴う大動脈弁逆流を生じる症例を認めるため,再建した右室流出路の評価と共に定期的なフォローが推奨される(レベルB)
先天性心疾患術後遠隔期の管理・侵襲的治療に関するガイドライン (2012年改訂版) Guidelines for Management and Re-interventional Therapy in Patients with Congenital Heart Disease Long-term after Initial Repair(JCS2012)
【ダイジェスト版】