4 不整脈
不整脈は,先天性心疾患術後の“自然歴”の一つである.上室頻拍,心室頻拍と一部の伝導障害は,罹病率を高めQOLを悪化させる(レベルC).頻拍型不整脈(特に心室頻拍)が心機能不全や心不全に合併すると,突然死を生じることがあるため,先天性心疾患修復術後の経過観察には,心機能評価と同時に不整脈の診断と適切な対応が必要とされる.①頻拍性不整脈 上室頻拍は,最も合併頻度が高く,心不全が発症,悪化したり,全身血栓塞栓などを生じたりすることがある.さらに,血行動態に大きな異常を伴う病態(心房負荷及び心機能低下など)では,突然死の危険を伴うことがある(レベルC).心房細動は,心房/肺静脈負荷による心房筋/肺静脈の障害により生じやすいため,特に40歳以降に修復術を行った心房中隔欠損では,術後も認められる。心室頻拍は,血行動態異常を伴う場合に合併しやすく,突然死の大きな原因の一つである.心室切開線や心室中隔パッチ縫合部が基質,肺動脈弁逆流による容積負荷あるいは遺残肺動脈狭窄による圧負荷が誘因となり心室頻拍が出現することがある(レベルC).②徐脈型不整脈 洞機能不全は,手術方法自体が洞結節に傷害を与える場合,洞結節動脈を損傷する場合,上大静脈へのカニュレーションが原因となる場合がある(レベルC).完全大血管転位心房位血流変換術後では経年的に増加し高頻度でみられるが,総肺静脈還流異常,心房中隔欠損,ファロー四徴などでも認められることがある.Fontan術後などでは,洞結節を含めた心房筋の広範な障害を起こし,洞機能不全を生じる場合がある.房室ブロックは,心室中隔欠損を伴う先天性心疾患の心内修復術の際,房室結節ないしヒス束を損傷することにより房室ブロックが発生することがある.ヒス束の経路が長い修正大血管転位や多脾症では,術後も房室ブロックが高頻度に認められる.1 修復術後不整脈の診断,管理,治療の必要性 成人先天性心疾患診療施設の救急外来,入院の原因のうち,不整脈は最も高頻度に認められる(レベルC).また,成人先天性心疾患の主要死因は突然死,心不全と再手術だが,中でも突然死は最も頻度が高く全心臓死のほぼ1/3を占め,突然死の原因は不整脈が大半を占める(レベルC).動悸,めまい,失神,易疲労感などの不整脈に起因する症状に注意し,病歴聴取,心電図,ホルター,運動負荷検査などを適宜施行する.2 術後不整脈の管理治療,侵襲的治療 不整脈,伝導障害に対する治療法には,生活制限,薬物療法,電気的除細動などの内科的非侵襲的治療法と,カテーテルアブレーション,ペースメーカ(抗頻拍を含む),植込み型除細動器(ICD),手術的不整脈治療など侵襲的治療法があり,発作の停止,予防,心拍コントロールが目標となる.不整脈治療のみでは不整脈の再発が多く,背景病変が手術により修復可能な場合は,再手術と不整脈手術を同時に行うか,カテーテルアブレーション後に修復術を行うことが推奨される(クラスⅡb,レベルC).
先天性心疾患術後遠隔期の管理・侵襲的治療に関するガイドライン (2012年改訂版) Guidelines for Management and Re-interventional Therapy in Patients with Congenital Heart Disease Long-term after Initial Repair(JCS2012)
【ダイジェスト版】